軟口蓋の開閉
2016年 04月 16日
声の仕事をしていらっしゃる方から、
『時々鼻が鳴る音がでて仕事に支障が出ている。
耳鼻科でみてもらい異常はないといわれたが、そちらで何かわかりますか?』というメールをいただきました。
多分、軟口蓋の開閉に関することだなと予想はつきましたが、実際に聴いて、みてみないことにはわからないので、その旨お伝えして受診していただくことになりました。
実際に音を聴いてみますと、確かに鼻が鳴るときがあります。
予想通り、軟口蓋が開きっぱなしで、口蓋垂がはためく音で鼻が鳴っていることがわかりました。
以下、診断として行ったことや開閉(主に閉じる方)のトレーニング内容を記します。
※軟口蓋…口の中の上顎を喉に向かって触れていくと、硬いところから柔らかいところに移動してやがて口蓋垂(ノドチンコ)に続きます。
この柔らかい部分を軟口蓋といい、ここが開くと音は鼻に抜けた音(鼻声)になり、閉じると抜けない音になります。
軟口蓋の開閉は、正確な発音にとって欠かせないことです。
《軟口蓋の開閉の確認》
【目視で確認】
・鼻濁音の『が』と濁音の『が』を交互に発音してもらい、濁音の時に軟口蓋が上に動いているかどうか確認する。
【音で確認】
・濁音の『が』行が不明瞭。
・他に『か』行、『た』行、『さ』行なども不明瞭になりやすい。
【振動で確認】
・上記の音は、鼻骨に軽く触ったり、鼻の穴を指で塞ぐことで、振動が大きく指に伝わり(鼻に抜けている)つまり軟口蓋が閉じていないことが確認できる。
・閉じて正しい出し方の音がでている時は振動しない。
《軟口蓋開閉のトレーニング》
【触れる】
・医療用グローブを付け、講師の軟口蓋に実際に触れさせ、動きを確認してもらう。
・鼻に抜ける『あ』と抜けない『あ』で軟口蓋の動きを確かめる。
・音の違いも耳で確認し、軟口蓋の使い方と音の変化を正確にリンクさせる。
・自分の軟口蓋に触れて、どこを動かすのか確認する。
【うがい、ストローでブクブク】
・軟口蓋が閉じないとできないことをして、閉じる感覚を知る。
・うがいやストローでブクブク自体ができない人は、神経麻痺など器質的な問題があると思われるので専門医へ。
・ほとんどの方は、うがい、ストロー…はできるが、声にすると無意識で開きっぱなしになってしまうタイプ。
・ストローは、タピオカ用などの太いものが良い。
・『うー』という音を出しながらブクブクさせてみると、鼻から抜けている時はブクブクしないので、ブクブクできる『うー』を探す中で、軟口蓋が閉じる感覚を捕まえる。
・繰り返し行って軟口蓋の感覚を鋭敏にしていく。
【か、か、か、かトレーニング】
・『か、か、か、か、』を下顎を動かさずに行う。
・口の開きを固定して発音することで、軟口蓋と舌根の感覚を鋭敏にすることができる。
《所感》
1度のみ60分ほどでの診察、トレーニングで、全く動かなかった軟口蓋が少し動くようになりましたし、鼻濁音、濁音の『が』の使い分けも少しハッキリしてきました。
感覚が鋭敏な方は音を聴いただけでできるようですが、開鼻声が癖になっている方にとっては難しいトレーニングのようです。
直接関係があるかどうかはわかりませんが、今回のクライアントは、小さい頃に扁桃腺の摘出手術を受けているそうです。
甲状腺の手術後に、同じような症状が出ている患者さんもいらっしゃるので、神経は何らかの影響を受けているのかもしれません。
軟口蓋の開閉は、聴いた感じでもかなり印象が変化します。
甘ったるい表現もシャープな表現も、身体の感覚を鋭敏にして自在に操っていきたいものです。
by satomi117h
| 2016-04-16 00:08
| 症例報告
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