声のお仕事、身体のお仕事と心地よいライフスタイルを追求します(*^o^*)


by satomi117h
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カテゴリ:症例報告( 3 )

軟口蓋の開閉

声の仕事をしていらっしゃる方から、
『時々鼻が鳴る音がでて仕事に支障が出ている。
耳鼻科でみてもらい異常はないといわれたが、そちらで何かわかりますか?』というメールをいただきました。

多分、軟口蓋の開閉に関することだなと予想はつきましたが、実際に聴いて、みてみないことにはわからないので、その旨お伝えして受診していただくことになりました。

実際に音を聴いてみますと、確かに鼻が鳴るときがあります。
予想通り、軟口蓋が開きっぱなしで、口蓋垂がはためく音で鼻が鳴っていることがわかりました。

以下、診断として行ったことや開閉(主に閉じる方)のトレーニング内容を記します。

※軟口蓋…口の中の上顎を喉に向かって触れていくと、硬いところから柔らかいところに移動してやがて口蓋垂(ノドチンコ)に続きます。
この柔らかい部分を軟口蓋といい、ここが開くと音は鼻に抜けた音(鼻声)になり、閉じると抜けない音になります。
軟口蓋の開閉は、正確な発音にとって欠かせないことです。
 

《軟口蓋の開閉の確認》
【目視で確認】
・鼻濁音の『が』と濁音の『が』を交互に発音してもらい、濁音の時に軟口蓋が上に動いているかどうか確認する。

【音で確認】
・濁音の『が』行が不明瞭。
・他に『か』行、『た』行、『さ』行なども不明瞭になりやすい。

【振動で確認】
・上記の音は、鼻骨に軽く触ったり、鼻の穴を指で塞ぐことで、振動が大きく指に伝わり(鼻に抜けている)つまり軟口蓋が閉じていないことが確認できる。
・閉じて正しい出し方の音がでている時は振動しない。


《軟口蓋開閉のトレーニング》

【触れる】 
・医療用グローブを付け、講師の軟口蓋に実際に触れさせ、動きを確認してもらう。

・鼻に抜ける『あ』と抜けない『あ』で軟口蓋の動きを確かめる。

・音の違いも耳で確認し、軟口蓋の使い方と音の変化を正確にリンクさせる。

・自分の軟口蓋に触れて、どこを動かすのか確認する。

【うがい、ストローでブクブク】
・軟口蓋が閉じないとできないことをして、閉じる感覚を知る。

・うがいやストローでブクブク自体ができない人は、神経麻痺など器質的な問題があると思われるので専門医へ。

・ほとんどの方は、うがい、ストロー…はできるが、声にすると無意識で開きっぱなしになってしまうタイプ。

・ストローは、タピオカ用などの太いものが良い。

・『うー』という音を出しながらブクブクさせてみると、鼻から抜けている時はブクブクしないので、ブクブクできる『うー』を探す中で、軟口蓋が閉じる感覚を捕まえる。

・繰り返し行って軟口蓋の感覚を鋭敏にしていく。

【か、か、か、かトレーニング】
・『か、か、か、か、』を下顎を動かさずに行う。

・口の開きを固定して発音することで、軟口蓋と舌根の感覚を鋭敏にすることができる。

《所感》
1度のみ60分ほどでの診察、トレーニングで、全く動かなかった軟口蓋が少し動くようになりましたし、鼻濁音、濁音の『が』の使い分けも少しハッキリしてきました。

感覚が鋭敏な方は音を聴いただけでできるようですが、開鼻声が癖になっている方にとっては難しいトレーニングのようです。

直接関係があるかどうかはわかりませんが、今回のクライアントは、小さい頃に扁桃腺の摘出手術を受けているそうです。
甲状腺の手術後に、同じような症状が出ている患者さんもいらっしゃるので、神経は何らかの影響を受けているのかもしれません。

軟口蓋の開閉は、聴いた感じでもかなり印象が変化します。
甘ったるい表現もシャープな表現も、身体の感覚を鋭敏にして自在に操っていきたいものです。





by satomi117h | 2016-04-16 00:08 | 症例報告 | Comments(0)

ジストニア(咬筋)

ジストニア(咬筋)の治療を継続中です。
患者さんの許可を得て、掲載します。

【背景・現病歴】
37歳。男性。役者。
舞台やアミューズメント施設での芝居、声の出演などの活動をおこなっている。
2011年の夏、声の出演の仕事で、特定の言葉が言いにくく違和感を感じたのが始まり。

咬筋だけではなく、口輪筋や、胸鎖乳突筋などの首周りの筋肉も強張り、
口が歪んだり、首ののけぞりや片側に曲がるなどの動きが頻繁に出ることもあった。
ひどい時には歯の噛み締めがきつく奥歯が欠けたことも。
口の周りの強張りが出ると、正中がどこなのかどっちに歪んでいるのか、自分の感覚が不明になることも。

病院を受診し、咬筋のジストニアとの診断を受け、ボトックス注射を勧められたが、
あまり気が進まずほかの治療法を模索している。

【来院時の状態】
一頃ほどの激しい噛み締めや、歯ぎしりの音をマイクが拾ってしまうほどのひどい症状はなくなったが、
状態を観察すると、口の周りや頬、舌などにいつもうっすら強張りがある。

激しい症状は、特に仕事中によく出ると感じていたが、
リラックスした飲み会や自宅でくつろいでいる時などにも、中程度の強張りや一瞬の噛み締めが出ることもあり、
ストレスとはあまり関係ないようなきがする。

アレクサンダーテクニックを続けている(発症前から)

症状のことがいつも頭にあり、自分本来のパフォーマンスができないもどかしさと、
今後の仕事への不安がある。

季肋部、腹部の強張り。
腹部の冷え、胃腸障害の訴えあり。

【治療内容と経過】
2014年2月から継続中。
2014年9月までに17回。

腹部、手足の冷えの解消、肝臓や胃の自動力をつける、
その日の状態をみながら必要な臓腑と経絡にアプローチなどの本治法。
顔面や頸部、口腔内、デコルテなどの筋膜リリース、
手法は、鍼、お灸(特にネパール棒灸)、手技。

特に、咬筋は、頭蓋仙骨療法(クラニオ)で、骨の動きに同調し内側から緊張を解いていくことをした。
また、顔面のこわばりは、本人の訴えと、直接触れて筋膜の動く方向を確認することでリリースしていった。

頭蓋仙骨療法(クラニオ)は毎回入れたが、3回に1回ぐらいは、時間を割くフルセッションとし、
スティルポイントに入ることで、自己調整力を高め、脳や神経を滋養し、正しい促通がなされることを念頭に行った。

日によって、鍼とクラニオの組み合わせ、もしくは鍼とネパール棒灸の組み合わせを試したが、
顔面に関しては、若干鍼との組み合わせの方が効果的だったような印象がある。

治療後は、概ね良好な状態。
ピタッと症状がなくなる時もあれば、ぼんやりと強張りが残ることも。

生活の中での注意として、
咬筋に強張りが出たときは、筋腹を寄せて、他動的に咬筋をたるませる方向に持っていくこと。
また、首や肩の強張りで、動きが出てきた時は、
止めようとしないで動きたい方向に開放してあげることを伝える。

どこかのタイミングで、ぐっと良くなったというわけではないが、徐々に気にする時間が少なくなっている。

治療中に、芝居の稽古と公演の期間が有り、
また声のサンプルを録るという初めての経験が有り、最中に何度か症状が出たが、
コントロールできる範疇だった。

【補足】
一番ひどい状態の時を一人で乗り切ってこられました。

お仕事のブースで、噛み締め状態で口を開こうとすればするほど固く噛み締める方向でロックし、
そのままでセリフを言うことも、何度もあったそうです。
座り方や身体の動かし方や、声を発するタイミングやいろんなことを工夫して、なんとか喋れるように研究なさったそうです。

思い通りに身体が動いてくれて、それが前提の自分自身の表現なのに、
身体のコントロールに自体に多くのエネルギーを費やさざるを得ないもどかしさや理不尽さ。
それが職業としている場で起こる。
職業性ジストニアならではの辛さです。

私の治療室にいらした時には、大変な時期を過ぎていました。
ほんとによくお一人で頑張っていらしたなぁと感心しました。
ご自分をよく観察していらして、時々、症状が、もはやお友達のようなニュアンスの言い方をなさる時もあり、
その明るさに、私のほうが励まされるようです。

いい方向なので、このまま消失してくれればいいのですが、
けいれん性発声障害の治療と合わせて、これからも経過をみせていただきながら、
私ができる治療法を研究していきたいと思います。
by satomi117h | 2014-09-24 18:56 | 症例報告 | Comments(0)

転換性障害の治療

転換性障害の臨床例です。
患者さんの了解を得てご紹介します。

【背景・現病歴】
32歳女性。派遣。
5年ほど前に家族との会話の時に、突然、口が開きづらく発語しづらい、手がこわばる、目を強くとじるような動き出る。
その後も、腕が意思に反して動く、みぞおちがこわばるなどの症状の他にも
意味のない言葉が出てきて日本語を忘れるんじゃないかと思ったりすることも。
病院を受診し転換性障害の診断を受ける。
器質的なものはないと言われ投薬なども受けずにいるが、度々出る症状に不安感が募る。

【来院時の状態】
自然体で明るい笑顔。
顎関節症あり。
首、肩に圧痛が多く、季肋部、腹部に強張りがある。
腹部の冷え、胃腸障害の訴えあり。
小児の頃アトピー、4年前から風邪の時に喘息的な症状。


【治療内容と経過】
2012年6月から2013年6月まで計13回の治療。

横隔膜や大腰筋、腸骨筋の筋力低下を是正して健康の底上げを図る。
腹部の強張りと冷え、顎関節と首肩周りの圧痛、凝りに対する治療、胃の動きをつけるなどの手技療法を行う。

また顎関節の痛みに対しては、頭蓋骨の動きに片寄りのパターンがあることを認め、頭蓋仙骨療法を行う。
これにより顎関節以外に、首、肩周りの圧痛も軽減。

治療では、初回から頭蓋仙骨療法をプラス。
動きが出てきても、止めようとせず、むしろ動きたい方向へ動かすように伝える。
手や首がうねるように動いたり、額や耳がゆっくり動いたり、瞼を固く閉じたり、眼球が上を向く動きなどが出る。
しばらく動くと静かになる。

一週間後の2回目の治療では、家でも、一人でいるときに動きが出たときは自然に動きに合わせてみたら強張りが薄れていくのを感じたと。
顎関節の痛みも軽減。

8月、5回目の治療で、家族との確執、症状が出ることへの不安感を語る。
このあとから、転換性障害の症状に対する訴えは少なくなり、それ以外の胃腸症状や生理前の痛みなどがメインに。
以降、月1回ペースで、その時の症状に合わせた治療を行うが、頭蓋仙骨療法は続ける。

頭蓋仙骨療法をはじめると、待ってましたという感じで手や首、頭がユルユル動き出す。
2013年2月、8回目の治療では不思議な言語を発する。
その声が、とても透明感のある素敵な声で、思わず引き込まれる。

本人に閉じ込めようとする意識はなく、むしろもうひとりの自分との再会を楽しむかのように治療時間を受け入れている様子。

2013年4月、11回目の治療では、症状はずっと出ておらず、普段の生活の中では、前回でたのがいつかわからないぐらいに。
以降、クラニオ(頭蓋仙骨療法)は続け、治療中に思い出したかのように手や首の動きが出ることも。
転換性障害の症状にこだわらず、その時々の体調に合わせた治療を行うように。


【補足】
初回のクラニオ(頭蓋仙骨療法)で、身体の強張りはかなり軽減した。
出たがっているのもは出そうというのが、治療する側の発想だが、
患者さんにとっては、その出たがっている症状がいけないものであるという思いに縛られることが、
さらに状態を複雑なものにしていくのではと思う。

この記事に関するお問い合わせは、治療室くるみまで。
by satomi117h | 2014-07-05 11:00 | 症例報告 | Comments(0)