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北秋田市在住の鍼灸師。治療のこと、田舎暮らしのことなど書いています。コロナ自粛のため東京治療室は閉鎖中。https://www.kurumi-room.com


by satomi117h
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転換性障害の治療

転換性障害の臨床例です。
患者さんの了解を得てご紹介します。

【背景・現病歴】
32歳女性。派遣。
5年ほど前に家族との会話の時に、突然、口が開きづらく発語しづらい、手がこわばる、目を強くとじるような動き出る。
その後も、腕が意思に反して動く、みぞおちがこわばるなどの症状の他にも
意味のない言葉が出てきて日本語を忘れるんじゃないかと思ったりすることも。
病院を受診し転換性障害の診断を受ける。
器質的なものはないと言われ投薬なども受けずにいるが、度々出る症状に不安感が募る。

【来院時の状態】
自然体で明るい笑顔。
顎関節症あり。
首、肩に圧痛が多く、季肋部、腹部に強張りがある。
腹部の冷え、胃腸障害の訴えあり。
小児の頃アトピー、4年前から風邪の時に喘息的な症状。


【治療内容と経過】
2012年6月から2013年6月まで計13回の治療。

横隔膜や大腰筋、腸骨筋の筋力低下を是正して健康の底上げを図る。
腹部の強張りと冷え、顎関節と首肩周りの圧痛、凝りに対する治療、胃の動きをつけるなどの手技療法を行う。

また顎関節の痛みに対しては、頭蓋骨の動きに片寄りのパターンがあることを認め、頭蓋仙骨療法を行う。
これにより顎関節以外に、首、肩周りの圧痛も軽減。

治療では、初回から頭蓋仙骨療法をプラス。
動きが出てきても、止めようとせず、むしろ動きたい方向へ動かすように伝える。
手や首がうねるように動いたり、額や耳がゆっくり動いたり、瞼を固く閉じたり、眼球が上を向く動きなどが出る。
しばらく動くと静かになる。

一週間後の2回目の治療では、家でも、一人でいるときに動きが出たときは自然に動きに合わせてみたら強張りが薄れていくのを感じたと。
顎関節の痛みも軽減。

8月、5回目の治療で、家族との確執、症状が出ることへの不安感を語る。
このあとから、転換性障害の症状に対する訴えは少なくなり、それ以外の胃腸症状や生理前の痛みなどがメインに。
以降、月1回ペースで、その時の症状に合わせた治療を行うが、頭蓋仙骨療法は続ける。

頭蓋仙骨療法をはじめると、待ってましたという感じで手や首、頭がユルユル動き出す。
2013年2月、8回目の治療では不思議な言語を発する。
その声が、とても透明感のある素敵な声で、思わず引き込まれる。

本人に閉じ込めようとする意識はなく、むしろもうひとりの自分との再会を楽しむかのように治療時間を受け入れている様子。

2013年4月、11回目の治療では、症状はずっと出ておらず、普段の生活の中では、前回でたのがいつかわからないぐらいに。
以降、クラニオ(頭蓋仙骨療法)は続け、治療中に思い出したかのように手や首の動きが出ることも。
転換性障害の症状にこだわらず、その時々の体調に合わせた治療を行うように。


【補足】
初回のクラニオ(頭蓋仙骨療法)で、身体の強張りはかなり軽減した。
出たがっているのもは出そうというのが、治療する側の発想だが、
患者さんにとっては、その出たがっている症状がいけないものであるという思いに縛られることが、
さらに状態を複雑なものにしていくのではと思う。

この記事に関するお問い合わせは、治療室くるみまで。
by satomi117h | 2014-07-05 11:00 | 症例報告 | Comments(0)